最後の出勤日が近づくと、「朝礼で何を言えばいいのか」「利用者さんには伝えていいのか」「ご家族にはどうするのか」と、挨拶のことで気が重くなる人は少なくありません。介護の職場は、職員だけでなく利用者さんとご家族とのつながりもあるので、一般の会社より挨拶の相手が多くなります。
この記事では、相手ごとに、いつ・どこまで・何を言うかを整理し、そのまま使える例文を載せます。退職の切り出し方は退職の伝え方に、退職届は退職届の書き方にまとめているので、ここでは辞めることが決まったあとの挨拶に絞ります。
先に結論:挨拶の3つの基本。
- 利用者さんとご家族に、いつ・誰が伝えるかは、先に上司に確認する
- 退職の理由は「一身上の都合」「家庭の事情」くらいで足りる。職場への不満は言わない
- 利用者さんやご家族と、個人の連絡先は交換しない
相手ごとの伝え方の早見表
| 相手 | いつ | どう伝えるか |
|---|---|---|
| 上司・管理者 | 最終出勤日の当日 | 退職の申し出はもう済んでいるので、お礼だけを伝える |
| 職員全体 | 最終出勤日の朝礼・申し送り | 30秒〜1分。お礼と、これからも元気でいてほしいという言葉 |
| お世話になった同僚 | 最終出勤日、または前の週 | 個別に一言。夜勤の人には勤務が重なる日に伝える |
| 利用者さん | 職場が決めた時期 | 伝えるかどうか・いつ伝えるかを、上司に確認してから |
| ご家族 | 職場の方針に合わせる | 面会や送迎のときに会えたら一言。わざわざ個別に連絡はしない |
| 他の事業所(ケアマネなど) | 担当が替わるとき | 後任の紹介とあわせて、職場の担当者から伝えてもらう |
朝礼・申し送りでの挨拶(例文)
最終出勤日の朝礼や申し送りでは、長く話す必要はありません。忙しい時間なので、30秒から1分で終わる長さがちょうどよいです。
例文①:基本の挨拶
「本日で最後の勤務になります。○年間、本当にお世話になりました。分からないことばかりだった私に、何度も教えてくださったことに感謝しています。皆さんもどうか体に気をつけてください。ありがとうございました。」
例文②:勤めた期間が短いとき
「短い間でしたが、お世話になりました。途中で抜けることになり、ご迷惑をおかけします。ここで教わったことは、この先も大事にしていきます。ありがとうございました。」
例文③:夜勤明けで朝礼に出られないとき(申し送りノート・掲示)
「本日の夜勤をもちまして退職いたします。直接ご挨拶できない方も多く、申し訳ありません。皆さんに支えていただいたおかげで続けてこられました。ありがとうございました。(氏名)」
退職の理由は、聞かれたら「家庭の事情で」「一身上の都合で」と答えれば足ります。転職先の名前も、言わなくて構いません。
同僚へのメール・メッセージ(例文)
勤務が合わず直接会えない人には、職場で使っている連絡手段で短く送ります。個人のLINEを知らない人に、わざわざ聞き出して送る必要はありません。
「○○さん、お疲れさまです。○月○日で退職することになりました。夜勤のとき、何度も助けてもらってありがとうございました。○○さんのおかげで乗り切れた日がたくさんあります。体に気をつけて、これからも頑張ってください。」
一斉に送る文面より、その人との具体的な場面を一つ入れるほうが気持ちが伝わります。
利用者さんへの伝え方
利用者さんに退職を伝えるかどうか、いつ伝えるかは、職場によって考え方が違います。認知症のある方が、急な変化で不安になったり落ち着かなくなったりしないよう、あえて伝えない、または直前に伝えると決めている職場もあります。自分の判断で先に伝えず、上司に「利用者さんにはいつ、どう伝えますか」と確認してからにしてください。
例文④:利用者さんへの一言
「○○さん、私、今月でここのお仕事を終わることになりました。いつもお話を聞かせてくださって、ありがとうございました。○○さんの笑った顔が好きでした。これからもお元気でいてくださいね。」
- 短く、ゆっくり:理由を説明するより、お礼を一つ伝えるほうが届きます
- 「また来ます」と約束しない:会いに来られないのに約束すると、利用者さんが待ち続けることがあります
- 後任につなぐ:「これからは○○さんが担当します」と、次の人の名前を伝えられると安心につながります
ご家族への伝え方
ご家族には、面会や送迎のときに会えたら一言伝える程度で十分です。個別に電話や手紙を出すかどうかも、職場の方針に合わせます。
例文⑤:ご家族への一言
「今月で退職することになりました。○○さんには本当によくしていただきました。これからは○○が担当いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。」
ご家族から「連絡先を教えて」と言われることもあります。そのときは「職場の決まりで、個人の連絡先はお伝えできないんです」と、職場の決まりとして断ると角が立ちにくくなります。辞めたあとの付き合い方は退職後、利用者さんと連絡を取っていいかにまとめています。
挨拶で言わないほうがいいこと
| 言わないほうがいいこと | 理由 |
|---|---|
| 職場や上司への不満 | 最後の印象だけが残り、残る職員の負担にもなる |
| 転職先の名前や条件 | 引き抜きや比較の話になりやすい。聞かれても「介護の仕事は続けます」くらいで足りる |
| 「人が足りないのに、すみません」を何度も言う | 人員の問題は職場が考えること。謝りすぎず、お礼を中心にする |
| 利用者さんへの「また会いに来ます」 | 守れない約束になりやすい |
| 利用者さん・ご家族への個人の連絡先 | 秘密保持や個人情報の面で問題になりやすく、後のトラブルのもとになる |
お菓子・手紙はどうする?
- お菓子:決まりではありません。配るなら、個包装で日持ちするものを休憩室に置き、「ご自由にどうぞ」と一言添える形が一般的です。夜勤の人の分も残しておきます
- 利用者さんへのお菓子や物:食事の制限やアレルギー、物のやり取りの決まりがあるので、渡さないのが基本です
- 手紙:特にお世話になった人に、短い手紙を渡すのは気持ちが伝わります。利用者さんに渡すかどうかは、上司に確認してください
よくある質問
介護職は、利用者さんに退職を伝えないといけませんか?
決まりはありません。伝えるかどうか、いつ伝えるかは職場によって考え方が違います。認知症のある方が不安にならないよう、伝えない・直前に伝えると決めている職場もあるので、先に上司に確認してください。
退職の挨拶で、辞める理由は話すべきですか?
話さなくて構いません。聞かれたら「一身上の都合で」「家庭の事情で」と答えれば足ります。職場への不満は、最後の挨拶では口にしないほうが無難です。
最終日にお菓子を配るのは必須ですか?
必須ではありません。配るなら、個包装で日持ちするものを休憩室に置く形が一般的です。利用者さんには、食事の制限や職場の決まりがあるので渡さないのが基本です。
ご家族から連絡先を聞かれたら、どう断ればいいですか?
「職場の決まりで、個人の連絡先はお伝えできないんです」と、職場の決まりとして伝えると角が立ちにくくなります。そのうえで、後任の職員の名前を伝えておくと安心してもらえます。
本記事は一般的な情報整理を目的とし、個別の法律相談ではありません。契約や紛争の判断は公的窓口・弁護士等へ確認してください。2026年10月時点の情報です。