長く担当した利用者さんほど、辞めたあとも「元気にしているかな」と気になるものです。ご家族から「これからも連絡をください」と言われたり、利用者さんから電話番号を聞かれたりして、どう答えればいいか迷う人もいます。
この記事では、辞めたあとに利用者さんやご家族と連絡を取っていいのかを、法律と職場の決まりの両方から整理します。場面ごとにどうするかの早見表もつけました。
先に結論。
- 個人の連絡先を交換して、私的にやり取りするのは控えるのが基本
- 仕事で知った利用者さんの情報を漏らさない義務は、辞めたあとも続く
- 気持ちを伝えたいときは、職場を通す
辞めたあとも続く「秘密を守る」決まり
介護福祉士には、法律で秘密を守る義務があります。社会福祉士及び介護福祉士法の第46条は、正当な理由なく業務で知った人の秘密を漏らしてはならないと定め、「介護福祉士でなくなつた後においても、同様とする」としています。
資格を持っていない職員にも、職場を通じて同じ考え方がかかります。たとえば訪問介護の運営の基準(厚生省令)の第33条は、従業者が利用者さんやご家族の秘密を漏らしてはならないこと、そして事業者は「従業者であった者」が秘密を漏らさないよう必要な措置をとらなければならないことを定めています。退職のときに秘密を守る誓約書を求められることがあるのは、このためです。
連絡を取ること自体が、すぐに違反になるわけではありません。ただ、個人的なやり取りが続くと、仕事で知った病気のことや家の事情を話題にしたり、他の人に話したりしやすくなります。連絡を取らないことが、いちばん確実に自分と利用者さんを守る方法です。
なぜ控えたほうがいいのか
| 起きやすいこと | 中身 |
|---|---|
| 情報が漏れる | 他の利用者さんや職員の話題が出て、仕事で知ったことを話してしまう |
| 頼まれごとが増える | 買い物、通院の付き添い、金銭の相談などを個人で引き受け、断れなくなる |
| お金や物のトラブル | お礼の品やお金を受け取り、あとでご家族との間で問題になる |
| 後任とのずれ | 利用者さんが前の担当者に相談し、今の担当者のケアと食い違う |
| 引き抜きを疑われる | 新しい職場のサービスに誘ったと受け取られ、前の職場と揉める |
場面ごとの早見表
| 場面 | どうするか |
|---|---|
| 辞める前に、利用者さんから電話番号を聞かれた | 「職場の決まりで教えられないんです」と、職場の決まりとして断る |
| ご家族から「これからも連絡をください」と言われた | お礼を伝え、困りごとは後任や職場に相談してほしいと伝える |
| 辞めたあと、職場あてに手紙や年賀状が届いた | 職場を通して受け取る。返事を出すなら、職場の了承をとり、仕事の話は書かない |
| 街やお店で偶然会った | 挨拶して近況を短く聞く程度でよい。体調や介護の話には深入りしない |
| SNSで友だち申請が来た | 承認しないのが無難。前の職場の方針も確認する |
| 亡くなったと知った | 葬儀に行くかどうかは、前の職場に相談する。職場として弔意を示す形をとることもある |
| 新しい職場に、前の利用者さんが来た | 偶然なら問題ない。前の職場で知った情報は、新しい職場でも話さない |
| 新しい職場のサービスに誘いたくなった | 自分から誘わない。利用者さんがサービスを選ぶのは、ケアマネジャーとの相談で決めること |
気持ちを伝えたいときの方法
お世話になった利用者さんに、どうしてもお礼を伝えたいことがあります。そのときは、個人で連絡するのではなく、職場を通す形にします。
- 1辞める前に、直接伝える最後の勤務の日までに、お礼を一言伝えておく(挨拶の例文)
- 2辞めたあとは、前の職場に相談する「手紙を渡してもらえますか」と頼み、了承をとる
- 3書くのはお礼だけ個人の連絡先・病気や生活のこと・新しい職場の話は書かない
「何もしないのは冷たいのでは」と感じるかもしれません。でも、利用者さんの暮らしを支えているのは、今の担当者です。後任にきちんと引き継ぐことが、辞めていく人にできるいちばんの支えになります。引き継ぎで書く内容は辞める前の引き継ぎにまとめています。
辞める前に確認しておくこと
- 就業規則・誓約書:退職後の秘密保持や、利用者さんとの私的な連絡についての決まりがあるか
- 私物のスマホ:利用者さんやご家族の連絡先、写真が残っていないか。残っていたら消す
- 手元のメモ・書類:利用者さんの名前や情報が書かれたものを持ち帰っていないか
よくある質問
介護職を辞めたあと、利用者さんと連絡を取るのは違法ですか?
連絡を取ること自体が、すぐに違法になるわけではありません。ただ、介護福祉士は辞めたあとも秘密を守る義務が法律で定められており、職場も退職者に秘密を守らせる措置を求められています。個人的なやり取りは情報が漏れたりトラブルになったりしやすいので、控えるのが基本です。
利用者さんのご家族から連絡先を聞かれたら?
「職場の決まりで、個人の連絡先はお伝えできないんです」と、職場の決まりとして断ると角が立ちにくくなります。困りごとは後任や職場に相談してほしいと伝えてください。
退職後に利用者さんから手紙が届いたら、返事を書いてもいいですか?
職場あてに届いたものは、職場を通して受け取ります。返事を出すなら前の職場に了承をとり、お礼だけを書いて、個人の連絡先や仕事で知った情報は書かないようにします。
辞めたあと、スマホに残っている利用者さんの写真や連絡先はどうすればいいですか?
辞める前に消してください。仕事で知った個人情報を職場の外に持ち出すことになり、秘密保持や個人情報の面で問題になりやすいためです。
公的情報
本記事は一般的な情報整理を目的とし、個別の法律相談ではありません。契約や紛争の判断は公的窓口・弁護士等へ確認してください。2026年10月時点の情報です。